鉋が良くできているかの判断の一つとして、金属組織を観察することがあります。
これまでは与板の鍛冶屋さんのところにお邪魔して顕微鏡を使わせてもらってましたが、頻繁にいくのもご迷惑になるので師匠が顕微鏡を手に入れてくれました。
この顕微鏡は問屋さんの倉庫に保管されており使われていなかったためレンズにカビが多数生えていましたが、分解してレンズをきれいにしました。過去に中古レンズを分解して清掃したりしていた経験が役に立ちました。
対物レンズが5x, 20x, 40xで、接眼レンズが10倍と15倍があるので、50倍か600倍まで対応しています。
金属組織の観察
顕微鏡は金属組織の観察と刃の研ぎ具合の確認に使用されます。
金属組織は鏡面に研ぎあげた面に腐食液を掛けることで境界をはっきりさせて組織を見分けられるようにします。
最大倍率(600倍)で下の写真のような組織が観察できます。これは接眼レンズにカメラを近づづけて撮影したものです。
これだとよくわからないので、上の画像をトリミングしたのが下の画像です。
白く見えるものが1次炭化物と言われるもので直径1~10μmの微細なものです。
そのほかの部分は焼き戻しマルテンサイトと残留オーステナイトの混合組織です。
その1次炭化物が細かい球状になっているのが理想的な状態と言われており、必要以上の熱を掛けたりすると粒が大きくなったり、細長い網状に繋がったりすることがあり、これが欠けやすさにつながるようです。
幸い観察された組織は球状化されているようなので、よっぽどひどい作りはしていないようです。
1次炭化物以外にも先に述べた焼き戻しマルテンサイトや残留オーステナイトも重要な役割を占めていると言われていますが、まだよくわかっていません。。。
よい判断ができるよう勉強も頑張ります。
ちなみに腐食された鋼は下の写真のようになります。少し黒くなっているところです。