2021年11月13, 14日に京都府亀岡市で開かれた“全国削ろう会 森の京都亀岡大会”に参加してきました。
削ろう会とは
極限まで薄い鉋屑を出すことを中心に、手道具や伝統技術の可能性を追求する会です。
大工をはじめとする木造・木工関係の職人のほか、
その工具を作る鍛冶、手道具や職人に興味のあるアマチュアが集まって、
競い・楽しみながら技術交流をしています。
削ろう会HPより
とのことです。
コロナによる影響で、第37回目が先行してしまいましたが、今回は36回目の全国大会でした。
師匠はこれまでに何回も参加しており、私は初めての参加となりました。
与板では毎年6月の第2週にミニ削ろう会も開かれています。
※今年は中止となりましたが。。。
初めての鉋の展示と販売
すでに鉋は与板の問屋さん経由で販売させていただいておりましたが、今回は初めての展示販売という形であり、どのようなご意見を頂けるかドキドキしていました。笑
展示は師匠のブースのごく一部を使わせていただき、寸六と寸八(鉋刃のサイズで、削りくずが約57mmと63mmのもの)を裏金付きで一枚ずつ置かせていただきました。
最前列の一番いい場所を使わせてもらい恐縮でした。
今回参加することは私のインスタグラムやFacebookで告知しており、その関係で寸八は購入していただける流れになっておりました。
もう一枚の寸六が購入していただけるかドキドキしながら立っておりました。
展示ブースにはこれまでにお会いしたことのある方々などが立ち寄っていただき、鉋に対するご意見を頂戴いたしました。
他の方の意見を聞けることはとても貴重な機会であり、個々の好みの部分を聞けると、今後の鉋づくりのヒントになりました。
今後どこかで私の鉋を見ていただく機会のある方は、なんでもおっしゃっていただけると、とても勉強になります。
本大会の総参加者数は存じ上げませんが、数分に1組ぐらいはブースに立ち寄っていただけるぐらい多くの人が来場していました。
様々な方とお話しさせていただきながら、夕方ごろ、ついに寸六を購入していただくことになりました。
今回製造した鉋
今回製造した鉋刃は寸八、寸六ともに、地金は極軟鋼、鋼は青紙1号でした。
地金に使用した極軟鋼は、師匠が地金に使用している生地(なまじ。古い鉄で、正式には錬鉄という)ではなく、現代の製法で作られた柔らかい鉄です。
極軟鋼は生地より少し研ぎにくいという難点がありますが、生地は扱いが難しく、今回は極軟鋼を使用しました。いずれは生地を使ってみたいと思っております。
また、まだ納得した作りの鉋はできていないので、無銘で販売させていただきました。
裏側にロット番号と連番は刻印しており、今回は12ロット目の9個目と10個目でした。
裏金も自分で作ったものですが、練習含めても10枚も作っていないものなので、おまけ程度に考えていただければと思います。
さて、製造した鉋ですが、まだ修行中のため、念のため組織観察を行いました。
通常はバフに研磨剤を塗布して研磨し、ぴかぴかにしてからエッチングをして観察するのですが、バフを掛けると平面が崩れるため、研磨しませんでした。
そのため、1時方向から7時方向にかけて研ぎ痕が残っております。
寸六(12-9)も、寸八(12-10)ともに白い粒(硬い炭化物Fe3C)がきれいに並んでいることが確認されるので、球状化されています。
球状化されていると欠けが出にくく、刃持ちがいいとされています。
鉋の製造中で温度が最も上がる鍛接や、火造りの際の温度管理もうまくいったので現状ではいい鉋ができたかなと思っています。
ちなみに温度管理を間違えたものは下の写真のように網状組織になってしまいます。白い炭化物が繋がってしまっているのが確認できます。
購入していただいた方
さて、今回用意した寸六、寸八各一枚ずつの鉋刃は無事購入していただけました。
初めて直接販売させていただいたので、記念撮影をしていただきました。
寸八を購入していただいたのは京都で宮大工をしている田中さんでした。
田中さんは事前にインスタグラムで連絡を頂いており、ご購入いただくことが決まっておりました。
昨年日本建築専門学校を卒業して、宮大工1年目ということでした。
仕事で使ってもらえることもありそうなので、どのような感想を頂けるか楽しみです。
もう一つの寸六を購入していただいたのは同じく京都の宮大工をされている北村さんでした。
さて、この時は分からなかったのですが、田中さんと北村さんは同じ会社(北村誠工務店)に所属されている方ということでした。
購入することを事前に話し合っていたというわけではなく、偶然ということでした。
北村さんからの感想も楽しみです。
1年経って
2020年9月29日に与板に越してきてから、はやくも一年が経ってしまいました。
一年がたって鉋はたまに失敗もしますが、地金が極軟鋼のものであればそれなりにスムーズに鍛接・鍛造できるようになってきたかなと思います。
最近は裏金も自分で作ろうと思い、小森小鉋製作所の小森さんにいろいろと教えてもらいながら作ってみました。
裏金用のハンマーの口がないので、一般的な形の裏金は作れず、鍛造で裏金に必要な形状を作り出しているのでなかなか形が安定しません。
そのほかにナイフやスクレイパーも作ってみましたが、そちらはいずれ別に投稿しようと思っています。
暮らしの面では、与板の地域の方々にも優しくしていただき、ナイフの鞘に使う朴の木をいただけたり、刃物の研ぎ方や見方を教えていただいたり、鑿の刻みをさせていただいたりしています。
まわりの方々のおかげで、無事1年修行することができました。
無事独り立ちできる日まで引き続き修行していきます。