1. 鋼作り
現在は既製品の鋼(主に日立金属のヤスキハガネ)を使用しており、長い板状で納品される。これを切断機で所定の長さに切り分けたのち(図1.2の左側)、ガス炉で熱して油等のごみを除去。その後、鋼を地金に鍛接したときに鋼と地金の境目がきれいに繋がるよう、端を落とす。(図1.2の右側)
2. 地金づくり
地金を900℃から1400℃に赤目、完成品から少し大きいぐらいのサイズに予め鍛造する。また鋼を乗せる部分は鋼と同じ、もしくは少し小さい幅に鍛造する。熱した熱を再利用するため、地金づくりが終わればすぐさま鋼付けに入る。
3. 鋼付け
地金づくり(図3.1)が終われば、水打ちと呼ばれる水蒸気爆発で地金表面のごみを取り(図3.2)、地金がまだ熱い状態のまま鋼に接合材を付け、地金の上にのせる(図3.3)。その後再度熱し、使用する鋼の種類によるが、約950℃でハンマーで鋼を打ち、鍛接する(図3.4)。
4. 伸ばし・切断
工程3で鋼を鍛接した後、そのまま伸ばしに入る。この工程では鋼付けした地金がおおよそ鋼の形になるよう鍛造し(図4.1)、その後切断する(図4.2)。
5. 頭まるめ
工程4で鉋を切断した後、頭を事前に半円状になるように切断(図5.1)し、金床の上に立てて乗せ、金槌で頭部を叩き、半円状になるよう頭を丸める(図5.2)。
6. 火造り・焼きならし
鍛接するために一度鋼の温度が上がり、鋼の組成が崩れたものを鍛錬することでより良い鋼に変えていく。またこの際工程4.伸ばしで荒く成形したものをさらに良い形に持っていく。火造りは800~900℃に熱し何度も鍛錬した後、徐々に温度を下げながら“熱する”⇒“鍛錬する”⇒“熱する”を繰り返す。最後に空冷(特に何もせず放っておくこと)することで焼きならしを行う。
7. (球状化)焼きなまし
この工程では鍛接や火造りで網目状に壊れた鋼の組成を球状化することにより、脆く欠けやすい性質や、耐摩耗性を改善するために行われる。電気炉内で約730℃まで加熱し、その後数時間温度を保持した後、炉内で徐冷される。
8. 岡ならし(ならし)
約400~500℃程度まで熱し、ハンマーでさらに形状を整えていく。その後、裏側(鋼のある面)に若干のしゃくみ(窪み)をつけ、刃先は手鎚で平らにする。
9. 仕上げ・刻印打ち
これまでの工程で荒れた肌を美しく仕上げる。与板独自のペーパー車(紙やすりを張り付けた車輪)で裏(鋼の部分)をきれいに磨く。また刻印を油圧プレスで打ち込むか、水野清介作「知足」のようにたがねを用いて手で彫る場合もある。
10. 泥(砥の粉)塗り
次の工程の焼き入れで焼きを均一に入れるため、鋼とその反対側に水に溶かした砥の粉を塗り、乾燥させる。
11. 焼き入れ
鉋を炉の中に入れ約800℃に熱し、水槽または油槽の中に入れ急冷させることにより、鋼を固くする。豆知識ではあるが、焼き入れ温度(800℃)になると磁性がなくなるため、磁石に付く・付かないで判断することもできる。
12. 泥落とし・歪み直し
焼き入れが終われば砥の粉の役目が終わりなのでワイヤーバフにより除去する。また焼き入れにより全体がゆがむ場合があるので、定盤(平らな金床)の上に鉋を乗せ、四隅を押すことでゆがみを確認する。ゆがんでいた場合は一角を鉄片の上にのせ手鎚で叩き、平らにする。
13. 焼き戻し
焼き入れしたままの状態だと脆く刃こぼれを起こしやすい。また組織が安定していない状態であるため、そのまま放置すると変形し、狂いが生じてしまう。その現象を回避するため油の中で約150~200℃に加熱し約20分間温度を保持する(低温)焼き戻しを行う。焼き戻しをしても硬さは変化せず、上記の弱点を改善できる。
14. 裏磨き
鉋刃が美しく見える裏(鋼)の表面に付いた酸化鉄を工程9.仕上げで使用した車輪を用いて磨き上げる。※この作業を行わず、黒い裏のまま製品として出荷する鍛冶屋もいる。これで鍛冶屋の仕事は終了。
15. 裏出し・研ぎ
多くの鍛冶屋は、鉋の刃先を平らにする裏出しと研ぎは研屋に任せる。研ぎが終わった後、台屋に持っていき鉋刃に合った台を製造してもらい、鉋が完成する。